疾と粋事

電子媒体に引き裂かれ落命

葬儀のはなし

 

父方のおじいちゃんが亡くなりました。

86歳の大往生でした。

備忘録として残しておきます。いつか読み返す私のために。

 

 

この歳になって葬式があると、前に出た葬式のことを思い出すんだなと気がついた。前に出た葬式を思い出した。友達の葬式。その前は、母方のおじいちゃんの葬式。

人は死ぬんだって知っているけれど、生きていると忘れてしまう。忘れた頃に、死ぬよって思い出させるみたいに、死んでいくなぁ、人。

 

お焼香、どうやるんだっけ。ああ、線香は反対の手で消すんだよね。おじいちゃんの遺影、ぶさいくじゃない? 正月に写真、撮ってあげたらよかったなあ。

 

 

祖父はとてもよく働く人で、洗濯から掃除から毎日欠かさず、友達とのゴルフにもよく出掛けていました。人付き合いがすごく好きな人で、祖母が出掛けるときには必ず送り迎えをして、たまには一緒に出掛けようよと祖母が言っても「おれはいいから、友達に遊んでもらえ。いずれ呼ばれなくなるから、友達はだんだんいなくなるから、呼んでもらえるうちにたくさん遊べ。」って言うのが口癖の人でした。書が得意で、庭の手入れも欠かさず、うちにくると「庭の木、切ってやろうか?」と言う人でした。

 

こんな86歳、実在するのかよ。怖くなってきたな。

 

亡くなる前日もゴルフ友達と元気に会っていたらしくて、お別れまで上手かよ、怖いな、やっぱり。

ちなみに、風邪が長引いているなと思っていたら実は肺炎で、入院した先で誤飲して亡くなったらしいです。半日も入院してないって。すごいねぇ、はぁ、ほんとうに、すごいねぇ。

 

祖父が亡くなったのは正直まぁ、そんなに、そんなにって言うとなんですけど、めでた葬式だし(めでた葬式ってことば聞いたことないっていろんな人に言われたけど、うちの親族がそう呼んでたので使いますね、大往生でめでたいということです)

 

 

それよりも、母、わたしの母の言動が印象に残ったのでそれを書き残します。

 

昨年、わたしの就職が決まったとき、「仕事が決まったら買ってあげたいと思ってた」「社会人にもなって就活スーツじゃみっともないから」「職場の人とか、身内でもたぶん、こういうのって急に要るから」とのことで無理やり、半ば無理やりに礼服(喪服)を買い与えられた。要らないよって、要るなら自分で買うよと言ったけどとにかくいま買いますと言って買われた。

 

母はいつも正しい。というか、母は自分が正しいと思っていることをやりとおす人だ。

母のやり方や言い方が気に入らないことは数多くあるけれど、正しい。正しくて、よりむかつく。

 

いざとなって、喪服、本当にあってよかった。パンプスはなかった(ヒールが抜けたので捨てた)ので、訃報を受けた日の仕事終わりに間に合わせで買った。靴屋は21時までやっててよかった。

 

次の日、通夜に向かう新幹線のなかで(こういうときにご霊前がつつめないのも、真珠のネックレスひとつ持ってないのも本当に、本当にいやだな)とぼんやり考えていた。最寄り駅に迎えに来てくれた母からミキモトの箱を「返してね」のことばつきで渡されて泣くかと思った。一緒に渡されたチョコパイを食べて、式場に行ったら「孫一同」の花がちゃんと出ていてきつかった。

あとで確認した喪服とネックレスは、とてもよく似合った。

 

あとで聞いたらネックレスは「これは結婚10周年のときにお父さんが買ってくれたやつ♡」とのことだったので(あ、じゃあ30越えてから持ってるやつか)と思ってちょっとだけ、救いだった。次の日も葬儀で借りた。

 

 

すべて終わってから親族が母に、母方のおじいちゃんが亡くなったときはあれやこれの手続きはどうしたか?という質問を色々していた。なかでも流石だなと思ったのは「入院して、あっ、これはと思った段階で即銀行に行って「入院費用が要るので」と言って全額おろした」のひとことだった。淡々としているけど、相当強いことを言ってる。けど、正しい。正しいけど、普通の人はできないよ。母方のおじいちゃんの遺影はめちゃくちゃかっこいいんですけど、それも「病気がわかったのがちょうど結婚記念の頃だったから、なにかと理由つけて無理やり写真館に連れてって夫婦の写真撮らせた(ちなみに祖母は当時めちゃくちゃいやがった、おそらく、意味がわかっていたので)」と宣うので、正気かよと思う、普通の人はできないよ。

 

葬儀のあれやこれや、少しずつ覚えていかないといけないなと思う。母のあれこれは、何かあったとき、わたしにも同じことをしろって言われてるな、とぼんやり思う。できるかな、できないよ。できないけど、やるんだろうな。もう聞いてしまったから。わたしはあなたの娘だから、きっちりやってのけるんだろうな。

 

とりあえずは、帰り際に母から言われた、「次帰ってきたとき、写真練習したいからとか言って、おばあちゃんの写真撮っといてあげて。」をどうにかしなくては、いけない。